30分間、一本勝負。
- ディーン・ノダ

- 2 時間前
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先日、仕事の移動中に立ち寄った「巣鴨」のお話です。

仕事の合間、魔が差したわけではないが、気づけば私は巣鴨の地に立っていた。
滞在許容時間は、わずか三十分。
分刻みのスケジュールというやつだ。
我ながら、密度の高い人生を送りすぎているのではないか。
平日の真昼間だというのに、巣鴨地蔵通り商店街は、信じられないほどの活気に満ち溢れていた。 歩いているだけで、どこからともなく「元気の素」を無理やり注入されるような、
圧倒的な「生(せい)」のエネルギー。
まずは、お約束の「とげぬき地蔵」こと高岩寺へ。
駆け足で、しかし敬意を込めて合掌。
日頃の煩悩を三十分で洗い流そうなどという不遜な願いはさておき、とりあえず街の空気に身を浸してみる。
ふと周囲を観察すれば、そこは「古き良き日本」のテーマパークのようであった。 年配の方々が、まるで十代の若者のように(あるいはそれ以上に)溌剌と闊歩している。 店先に並ぶのは、一周回って新鮮にすら映る古風な土産物の数々。
そして、至るところに躍る「筆文字」の作品たち。 その力強い墨のハネや払いを眺めていると、「人間、文字はこう書くもんだよ」と、パソコンのフォントに慣れきった生活を叱咤されているような気分になる。
「ああ、今度はプライベートで、泥沼に浸かるほどゆっくり探索したい……」 そんな後ろ髪を引かれる思いを断ち切るように、私は「ある店」に吸い込まれた。
『元祖千成もなか 巣鴨店』。
事前調査など一切していない。私の野生の勘が、「ここには何かがある」と囁いたのだ。
お目当ては、どら焼き。 黄金色に焼かれたその皮の佇まいに、一目惚れしたと言ってもいい。
店内で一服させていただいたのだが、ここで私は衝撃を受けた。
接客が、凄まじく、素晴らしいのだ。
丁寧。とにかく丁寧。
押し付けがましくないのに、こちらの欲しているものを瞬時に察知する、あの神業のような間合い。
「プロの仕事」を目の当たりにすると、人間は抗えない。 気づけば私は、家族への手土産という名目で、どら焼きを衝動買いしていた。 予定より多い? 重い? そんなことはどうでもいい。
この接客に見合うだけの「買い」をせねば、江戸っ子(ではないが)の名が廃るというものだ。
鞄の中にずっしりと鎮座するどら焼きの重みを感じながら、私は足早に次の現場へと向かった。
三十分という短い時間。けれど、私の心とお腹の幸福度は、間違いなく上限を突破していたのである。
今回訪れたお店:元祖千成もなか 巣鴨店 食べログ:元祖千成もなか 巣鴨店



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